美っつい庵主さん
1957年10月「文学界」

尼寺に若い男女の学生が飛び込んでくるという話。
尼さんたちの日常が描き出されたユニークな作品。

感想
 辛気臭いところなど、微塵もない。尼さんたちの俗っぽさが愉快である。下の本文からの抜粋に取り上げた部分、女が自立して働くということに、当時はまだ相当の覚悟がいったのだなと感じた。
あらすじ
 庵主が代々「美っつい」という尼寺が舞台。ある夏、庵主の遠縁にあたる悦子が、友人と遊びに来るとの葉書を寄越す。平凡な日常の繰り返しに明け暮れる尼寺では、来訪を大歓迎で待っている。するとやって来たのは、悦子とその友人昭夫であった。尼寺に若い男性の泊り客!
 世間から隔離された感のある尼寺は、意外に健康的な生活空間であった。その中で、悦子と昭夫は、都会の慌しい生活のストレスを癒し、大学の卒論をまとめるなどして過ごす。しかし十日もいると、単調な尼寺の生活とは対照的な都会の喧騒が懐かしくなり、また突然に帰ることにする。
 後日お礼にと悦子から届けられたマカロニを前に、あの二人は恋人同士だったのかどうかと懐疑する尼さんたち。そして悦子より年下の昌妙尼の胸には、昭夫へのほのかな想いがたゆたっている。
本文より抜粋
女の自立する時代がきて、働いて食べている同性を身近に見る昨今、悦子はその凄まじさに時折総毛立つことがある。酒場のマダムが青年を揶揄した例は、やはりその一つだ。女が一人で働くとき、大がい何処かで羽目が外れている。それは結局自分で生きて行く苦しさへの抵抗かもしれないのだ。
収録書籍*〜*〜*
『美っつい庵主さん』新潮社・新潮文庫 新潮社有吉佐和子選集第1期第11巻『華岡青洲の妻』
新鋭文学叢書9『有吉佐和子集』筑摩書房
参考情報*〜*〜*

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