とろろ昆布
1958年7月「オール読物」

日舞の指南所を舞台に、3人の若い娘たちの姿が描かれている作品。

感想
 女ばかりの集団は怖いと今更ながらに思う。ドン臭い初枝は関西の出身で、のんびりした口調が周囲を苛立たせる効果バツグンである。
あらすじ
 尾木流日本舞踊指南所には、若い内弟子が3人いる。おとなしく卒のない道子、空恐ろしいほど気の利くカツ子、ドン臭い初枝。カツ子と初枝は対照的で、度々トラブルを起こす。指南所内で貴重品の盗難事件が頻発したことが契機となり、家元の指示で、代稽古の繁子は初枝を郷里へ帰らせる。鈍い初枝に盗みなど出来るとは思えない繁子は、後味の悪い思いをしている。再び、指南所内で盗難事件があるとカツ子が怪しいとの噂が立ち、家元は犯人だと確定しない内に名取りにしてしまおうと言い出し、繁子を唖然とさせる。犯人と決まってしまっては、名取料が取れなくなってしまうと言うのだ。そんな折、初枝からとろろ昆布が届く。大好物だというカツ子は、喜んで台所へ運んで行くのだった。
本文より抜粋
「わ、大変!誰か来て。早く!」
 奥の間で悲鳴に似た声がきこえた。台所脇の三畳にいた三人は、それぞれの姿勢からハッと顔を上げた。
 次の瞬間、三人は各自に特徴ある行動を起こした。道代は畳んでいた洗濯物を措いて立上がると、すぐ奥の間に走って行った。鏡を見ていたカツ子は横っ飛びに台所へ入って、板の間の隅に乾してある雑巾を二つ三つ手早く拾い上げた。
 初枝は寝そべって雑誌を見ていたのだが、横の二人の敏捷な動きに怠けものの本性を先ず刺激されてしまったものか、これはのっそりと立上がった。
収録書籍*〜*〜*
『美っつい庵主さん』新潮文庫 新潮社有吉佐和子選集第1期第3巻『女弟子』
『江口の里』中央公論社・中公文庫
参考情報*〜*〜*

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