若草の歌
1962年5〜8月「大阪新聞」他

東京の下町で蕎麦屋を経営する、金さん一家の娘二人を中心としたホームドラマ。

感想
 有吉作品には珍しく、終始ほのぼのとした展開である。金さんには、良い奥さんがあり、二人の可愛い娘がいて、親の勧めにしたがって理容師になり「若草理容店」を経営する。店も順調で、二人の娘も良縁を得て幸せになり・・・といった話。
 良い人ばかりが登場し、たいした事件もないが、最後まで飽きずに読ませる筆力はさすがだと思う。平凡な母親の偉大さが、金さんの奥さんにちらほら見受けられるのが、有吉作品らしい。
あらすじ
 「そば金」の店主である金さん夫婦には娘が二人いる。これからの世の中、手に職をつけることが大切だという主張のもと、金さんは娘たちに理容師になることを勧める。二人は、理容師の国家資格を取って、蕎麦屋の隣に建ててもらった「若草理容店」を経営するようになる。
 店の経営は順調であったが、しばらくして姉の千秋が結婚をし、その夫と妹の元子が、店の経営方針をめぐってぶつかるようになる。仲違いをしたわけではないが、結局、元子は家を出、千秋夫婦の援助によりアパートで一人暮らしを始める。
 間もなく、千秋には子供が生まれ、元子は、義兄の紹介で出会った男性と結婚することになる。金さんは、末娘の結婚が自分の知らないところでトントン拍子に決まってしまったことに寂しい想いを隠せない。しかし、元子のいなくなった穴埋めにと理容店に雇い入れた若い男女が結婚することになり、仲人を頼まれた金さんは大張切り。
 そのうち、元子にも子供が出来、日中、預かって欲しいと金さん夫婦は頼まれる。また「そば金」で新たに雇い入れた店員もたいへんな働き者で、奥さんも良い人であることから、住み込みにしてあげようと考える。
 金さん夫婦は、旧婚旅行へと都内のデラックスホテルへ出かけ、東京の夜景を眺めながら、しみじみとした幸福に浸るのであった。
本文より抜粋

*金さんと奥さんの会話*

「しっかりものだねえ、俺たちの子供は」
・・・・・
「あなたに似たんですわ」
「いいや」
金さんは首を振った。
「お前は黙って俺の云うなりについて来ているように見せて、実はなかなかのしっかり者なんだ。
俺は知ってるよ。母親がよくなくっちゃ、子供はしっかりとは育たない」
収録書籍*〜*〜*
『若草の歌』集英社
参考情報*〜*〜*

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