水と宝石
1959年8月「新潮」

美しいが初老の伯母と、若い姪の生活の断片が描かれた作品。

感想
 若さって残酷だ。若いときには誰もそうとは気付かずにいるけれど。熱帯魚が泳ぎまわる水槽を凝視しているような、不思議な感覚の作品である。
あらすじ
 夫が残した財産を元手に宝石デザイナーとして成功している政代は、初老ではあるが、美しさと若さを努力により留めている。昔の男たちの名をつけた熱帯魚の飼育に夢中になっていて、早朝に行われる魚達の交尾の姿に見とれている。一方、同居中の姪の耀子は大学生と若く、天衣無縫。伯母の若さへの執着とは対照的である。
 ある日仕事で外出した折、個人的に加工を依頼しようと持ち出した高価な宝石を紛失してしまったことが、昔、子供を失った記憶を呼び覚まし、政代は暗澹とした想いにとらわれる。政代は耀子に高価な宝石を無くした話をするが、さしたる反応は見せず、貰ったというルビーの指輪がイミテーションだと分っても大してがっかりもしない。若い耀子にはその赤い指輪がよく似合っていた。
 翌朝、熱帯魚が病気にかかり大騒ぎをする政代を尻目に、耀子は、熱帯魚も宝石も何の役にも立たないのだから、死んだっていいと言い放つ。
本文より抜粋

*耀子のセリフ*

 死んだっていいじゃありませんか。熱帯魚だって宝石だって、あれば贅沢で凄みがあるけど、それだけのもんじゃありませんか。何の役にも立つってものじゃないわ。どんどん死ねばいいのよ、もともと必要はないものなんだから。
収録書籍*〜*〜*
『三婆』新潮社・新潮文庫 新潮社有吉佐和子選集第1期第3巻『女弟子』
新鋭文学叢書9『有吉佐和子集』筑摩書房 新日本文学全集4『有吉佐和子』集英社
日本短編文学全集37『平林たい子・円地文子・有吉佐和子』筑摩書房
参考情報*〜*〜*

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