| 更紗夫人 |
| 1961年1〜12月「スタイル」 |
杉並に住む、資産家の美しい未亡人:郷原紀代のいわば成長物語。
更紗染にすがって、ただ生きて来た女性が、芸術作品を生み出すまでに変貌する姿を描いている。
| 感想 |
| 彼女の恋愛は成就するかと思えば、破綻し・・・という物語としての展開は悪くないが、紀代というキャラクターは、弱々し過ぎて、あまり魅力を感じられなかった点が残念。 |
| あらすじ |
| 夫を失って後、裕福ではあるが何の目的もなく、ただひっそりと子供と共に生きてきた紀代。唯一、関心を持って取り組んできたのは更紗染であった。 舅の後押しで開いた展示会で出会った新聞記者:丸尾の「更紗染は道楽か」との問いに奮起した紀代は、年下の丸尾の苦言を入れながら、より一層、更紗染に熱中してゆく。 丸尾は紀代に会う機会が増えるにつれ、彼女の美貌と独特の静謐さに惹かれてゆくが、年齢差、住む世界の違いなどが気になり、紀代への思慕をどうしたらよいかと決めかねつつ、紀代の秘書で、彼女とは対照的に明るく活動的な靖子とも親しくなってゆく。 一方、紀代の方も、徐々に丸尾への想いを深めていたことを自覚するようになってゆく。彼の愛情を確認したいと思っていた矢先、丸尾から、紀代の秘書:靖子との結婚を告げられる。 行き場を失った丸尾への想い。その切なさを埋めてくれるかに思えた、亡夫の親友:岩永と、紀代は再婚を決意する。 ところが、自身の更紗染の実力を結婚前に再確認したいと開催したショーの場で、彼の愛人の存在を知ることになる。それは、彼女の作品の最大の顧客であり、ショーに出演もしてもらった宮田のり子であった。 宮田を「酒場のマダムだから」と蔑む岩永に失望した紀代は、結婚を止める。 再び更紗染のみの人生に逆戻りした紀代であったが、彼女の作品が日展の特選になり、彼女の更紗染は、芸術として昇華していくのだった。 |
| 本文より抜粋 |
*紀代と岩永の会話*「どうして宮田さんと結婚なさいませんでしたの?」「紀代さん」 呆れたように岩永は云い足した。 「考えて下さいよ。酒場のマダムと僕が、何故結婚しなければならないんです。あなたはもっと誇をもっている人だと思ったのに」 ・・・・・ 「岩永さん、私も宮田さんも同じ女でございますわ」 郷原家の未亡人が、パルファンのマダムより格が上だと云うのか。女に弄んでいい相手と、そうでない相手といるというのか。・・・・・ 岩永英生が、紀代を本当に愛しているということまで疑うには、紀代の自尊心が許さなかったが、彼が女に対して持っている考え方を彼女は許せないと思うのだった。 |
| 収録書籍*〜*〜* |
| 『更紗夫人』集英社・集英社文庫 |
| 参考情報*〜*〜* |
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