| 複合汚染その後 |
| 1977年7月潮出版社 |
『複合汚染』の読者である著名人との対談。
『複合汚染』で問題提起された内容が、さらに掘り下げて検討される。
| 感想 |
| 読者の興味を引き付け、分りやすくと書かれた『複合汚染』に比べると、こちらは専門家との対談であったりするので、読み進むのに困難を感じる部分もあったが、その分、勉強にはなる。 本来、作物を生産すべき土地が、投機の対象になってしまっていることによる日本経済の異常性に警鐘を鳴らしている部分があり、経済に疎い私でさえ、やはり抜本的な構造改革が必要なことが理解できる。そういう歴史があって、今の日本の不景気があるというのが苦々しく実感できる。また、有吉さんの農業に対する思い入れの深さの理由もよく分った。 有吉さんに負けず劣らず好きな作家である司馬遼太郎氏もこの対談には登場していて、そういう点でも興味深かった。 |
| あらすじ(目次と対談者) |
| 複合汚染と土地公有論・・・司馬遼太郎・久宗高・内山政照・金子美登 土地タダ化論は空論か・農地が土地投機の対象・土地所有の歴史・高度成長と土地問題・土地はタヌキの木の葉・化学肥料は爆弾・十年後に勝つ人々・大地維新の幕開け 百姓の大地・・・司馬遼太郎・金子美登 乳牛と共に育つ・自給農業の理論・コメ経済とゼニ経済・一億人の自給は可能・フランス農民の心・何が悲しくて江戸へ行くのか 農業に寄せるわが思い・・・宮脇朝男 生命の管理人の務めを怠って・“シカを追う猟師山を見ず”・お米の値段と文明への危機感・農法回帰のきっかけを求めて・機械を使うなとは言わないが・農薬は質と量と使い方が問題・中国の農業と日本の農業・完璧を求めて本質を忘れるな・生産者は消費者を甘やかすな 人間を複合汚染から救えるか・・・宮本憲一 日常の中に「公害」意識を導入・“工業、経済は十五年前が理想”・産業構造の転換が必要・逆輸入される販売禁止の農薬・すぐできる農薬の専売公社・次の課題は「通産省」 複合汚染が作る人間のタイプ・・・西丸震哉 右手は天国、左手は地獄・「ウナギとウメボシ」の反証・有機水銀が脳に蓄積して・「平均寿命七十数歳」のウソ・生物性を無視した人口会議・ノアの箱舟式に生き残る 「複合汚染」のうらおもて・・・野坂昭如 「有機農法で収穫が減る」か?・農薬による「省力化」の神話・開き直りの問題提起 冷害と農業の危機・・・坂本慶一・星寛治・山下惣一 冷害の村からの報告・崩れる生産基盤・冷害に勝った人々・有機農業の意味・政府に従わない伝統・機械貧乏と農地解放・農本主義というレッテル・百姓の最高のぜいたく・「卵の会」という自営農場・“土ばなれ”が近代化か・買い出し論は正論 |
| 本文より抜粋 |
*“土地所有の歴史”より司馬遼太郎氏談*維新政府はそれまで徳川体制と同じように経済単位には石高制をそのまま使っていた。来年度の予算は米何万石---とやっていたわけですが(笑)、国際経済の中に入ると通貨性を持たない米穀ではどうしようもない。そこで現金で税を取りたて、現金で予算を組まなきゃならなくなったわけですが、その時に深刻な重大問題が起こります。誰から税金を徴集するかということです。そうなると、当時、日本の人口、三千万人のほとんどを占めている百姓からとるしかない。結局、税の金納のお触れが出されるわけですが、それが明治六年なんですね。しかし、江戸期における百姓のモラルとして自給自足、すなわち商品経済に関わらないという生活の倫理があったんです。それが一転して、金で税金を納めろとは何事かというわけで百姓の反発をまねき、反政府運動が起こる。 ・・・・・・・・ 凄い勢いで百姓一揆を起こすんですが、結局は負けて、百姓は税の金納をやらざるを得なくなってしまう。といっても、百姓は現金を持っていませんから、村に一、二軒はある商品経済のセンターのようなよろず屋とか、造り酒屋とかに土地を提供し、代わりに税金を納めてもらう。これが、そもそもの小作農発生の原形なんです。 江戸期には百姓の九割方が自作農だったものが、明治六年を境として全国的規模で小作農に代わっていくわけです。われわれは、ふつう小作人というのは太古以来、宿命的にいたと思いがちですが、そうじゃないんです。 “お米の値段と文明への危機感”より有吉佐和子氏談・・・わたしの母方の一族が決定的な打撃を受けたのは、戦後の農地改革なんです。わたしの母などは大正リベラリズムのいちばんいい教育を受けて、その頃のいちばんぜいたくな生活もしたし、非常に新しい思想を教育によって受けていましたので、農地改革、不在地主の扱いについて、当然だという受け止め方をわたしの家族はしたんです。ですから、農民が農地を手にしたというのは、わたしたちはそのとき自分たちから富を奪い去られるとき、しかし農民は農地を手にしたのだという、変な言い方ですが、喜びを持ったわけですね。わたしたちが率直に、生活感覚から見て、今の農村の現状を見ておかしいじゃないかっていいたいのは、農地改革以前の地主のぜいたくは、ほんとうにベストセラーがいくつ出たって張り合えませんよ。わたしの母の娘時代のぜいたく、祖父母のしていたぜいたくは戦前のほんとのぜいたくでしたから、あの富裕な生活は、今、大財閥といわれる方たちの生活でもどうかなと思う・・・それにそれほどひけ目も感じませんね、その頃やっていたぜいたくは。それが根こそぎ農地改革でなくなったんです。わたしは多少小説が売れるようになって、人並みな生活はしてますけど、うちの一族が貧乏になったのは農地改革でした。で、その貧乏になったことに対して誰も不満を持たなかったんです。不満を持たなかったわたしたちにとって、農民がしかし幸福になっていない現状というのはむしろうらみです。なぜだ?という考えがあって、それは基本的にわたしの祖父が、わしは百姓じゃ、百姓の味方やといって、一生を生き抜いて、それはある意味ではいい気なもんだったかもしれません。彼は大地主でしたから・・・・・。だからとても気持ちのいい一生を送ったと思うんです。自分のお金をつかって人助けをしてたんですから。でも、わたしは祖父のそういってたことばを聞いて育ちましたし、母もそういう親に育てられて、そして今の農民の現状を見た場合に、話が違いすぎるじゃないかっていうのが、わたしが『複合汚染』を書く場合、農業に向けた目でしたね“開き直りの問題提起”より有吉:・・・危険だということを知っていても、「いいやいいや、おれたちは死ぬんだから」なんていう人がいますが、そりゃ簡単に死ねればいいけど、わけのわからない病気になって、それを治す薬もないという状態で年をとるのは、私は断固イヤだわ(笑)。死ねばいいんだから、という人たちがいちばんいけないんですね。野坂:それは男に多いでしょう。 有吉:ええ、男に多いですね。(笑) 野坂:日本の男にはどうも玉砕精神があって、てめぇの責任というのを少し考えると、みんな死ねばいいんだとすぐ思う。(笑) |
| 収録書籍*〜*〜* |
| 『複合汚染その後』潮出版社 |
| 参考情報*〜*〜* |
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