| 感想 |
| 王台とは女王蜂の卵を産みつける巣房のこと。女の身勝手さ、残酷さが描き出されていて、ちょっと苦笑させられる。ヒロインの瑶子の生い立ちは、著者と重なるようなところがあって、興味深かった。 |
| あらすじ |
瑶子は幼い頃病弱であったことからか、美に対して異常な執着を育ててしまい、また身についた読書の習慣が、その傾向をますます強めてしまっていた。その厳しい美の基準に従って、自宅に遊びに来る長兄の友人を峻別した結果、山際という青年がパスする。ある時どんな女の人が好きかと聞いて挙げられた女優が美しいのに較べて、瑶子は自分の容姿に劣等感を抱くようになってしまう。
年頃になっても鬱々とした瑶子であったが、ふとしたことから次兄の友人:垣内の思慕の対象となる。美男ではない垣内を疎んじながらも、彼を逃しては他に崇拝してくれる男など望むべくもないと思う瑶子は気のある素振りを見せ、体も許してしまう。垣内は将来は結婚するものと信じていたのに、しばらく帰郷していた間に、瑶子は別の男:能代と結婚を決めてしまう。瑶子は能代に初めから惹かれていたのだが、問題にされないと思い、諦めていたのであった。残酷な瑶子の仕打ちのせいか、垣内は結核を発病し、闘病生活を余儀なくされ、遠い郷里に帰ってしまう。
そんな二人が再会するのは二十年後のこと。蜜蜂の研究をしているという垣内は非常に若々しい印象を残す。それから更に十年後、瑶子は垣内の郷里和歌山に彼を訪ねる。前回の再会の後、夫を亡くした瑶子は事業を始め、製造している化粧品にロイヤルゼリーを入れたいと言う。王台を眺めていると女王蜂が生まれた。その弱々しい素振りを見て、前の女王蜂に殺されてしまうのではないかと瑶子は哀れむのであった。 |
| 本文より抜粋 |
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病弱はまた、読書の習慣を瑶子に植えつけ育てていた。早熟であったから学校の勉強は馬鹿馬鹿しく、もっぱら父親やずっと齢上の長兄の蔵書や愛読書に親しみ、いいと思ったものは幾度も繰返して暗記するまで読み返したが、受けつけられぬものは最初の数行を読むだけで本を閉じた。 |