| 処女連祷 |
| 1957年2月三笠書房 |
R女子大の仲良しグループ7人の話。戦後、適齢期の男性が不足し、女性が余っていると言われた時代、
ごく普通の恋愛、幸せな結婚を夢みる乙女たちの心の葛藤が描かれている。
| 感想 |
| 20代の女性にとって、結婚できるかどうかは大問題なのである。それにしても、ここまで込み入った嘘をつくのは、行き過ぎだ。倉賀野祐子って嫌な感じとは思っていたが、かなり最後まで、彼女の嘘には騙されてしまった。 テーマはともかく、著者の物語を構成する力の素晴らしさは、この初期の作品からも十分うかがえると思う。 |
| あらすじ |
| 卒業を間近に控えたR女子大の仲良し7人組。唯一恋人のいる倉賀野祐子は、事あるごとに友人達に悩みを打ちあけていて、友人達は祐子と醍醐公彦との馴れ初めから詳しく知っているほど。卒業後、7人はそれぞれ社会の様々な分野に巣立って行くが、男性が不足していることも手伝って良縁に恵まれずにいる。 祐子は相変わらず、醍醐とのことを電話や手紙で知らせてくるが、一向に結婚をしない。自分には相手がいるということで、友人達の世話を焼く祐子は、見合いの話があると言っては、友人達の乙女心を騒がす。適齢期を過ぎ、焦り始めた彼女たちは見合いを心待ちにするが、話が立ち消えになったりと、結果的に、祐子にいいように翻弄される。 そんな中の一人瀬見薫の場合は、さんざん待って見合いをし、またさんざん待って結果を聞いたが、相手の男が好きなのは祐子であったとのこと。本人はがっかりしているだけであったが、話を聞いた友人達は、祐子が故意に薫を弄んだことを見抜く。偶然掴んだ情報などから、醍醐という恋人の話も実は嘘であるらしいことも分ってくる。 そうこうするうち、醍醐が病を得て亡くなったと祐子が知らせてくる。長年、嘘をつかれたことへの怒りから、友人達は、いるはずのない醍醐への香典を持って、祐子を訪ねてやろうと計画するが、やはりそこまで追い詰めるのは気が進まず、彼女を断罪することは諦めてしまうのであった。 |
| 本文より抜粋 |
*友人のひとり:田中文代の心理描写*誰も恋人のないとき、恋人を設定して以来、それを長い歳月守り育ててしまった祐子に、当座しのぎの嘘が趨勢やむなく雪だるまのように膨張してしまったことより他に、より深く、より切ない悲哀が感じられてならない、所詮、処女は誰も醍醐公彦を心で待つ者なのではないか。醍醐公彦の出現を望み祈り続けているのではないか。その願いが強すぎて、祈祷最中の霊感が実生活と結びつくことがあったとしても。それを嘲り退けることは、文代にはもはや出来なかった。倉賀野祐子の醜態は、現実逃避が生んだ破局なのだ。・・・・・が、文代は知っている、彼女には・・・・・倉賀野祐子を蔑めない。現実を正しく凝視して、釈明を一切退けて生きることの難しさを、文代は知っていた。 |
| 収録書籍*〜*〜* |
| 『処女連祷』三笠書房・集英社文庫 |
| 参考情報*〜*〜* |
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