コラム 第12回  「田毎(たごと)の月が見たい」
            
            1998年5月13日 書き下ろし              
                                            トップページへ戻る  

 田毎(たごど)の月とは,広辞苑によると,「長野県更級(さらしな)郡,冠着山(かんむりきやま)の山腹の,段々に小さく区切った水田の1つ1つにうつる月」とあります。
 俳句にも
 「帰る雁 田毎の月の くもる夜に」(与謝蕪村)
などとうたわれています

 ところで,「田毎の月」は,左の図のように,棚田(斜面の等高線に沿って作られた小さな田)の一つ一つにうつる月なのでしょうか?
 現実には,いくらたくさん田があったとしても,光の反射具合から考えると,同じ月(同じ月の部分)が複数の田に同時にうつることはありえません。
  しかし, 月の高度がまだ低い場合,右の図のように数枚の田にわたって1つの月が分割してうつることはあります。
これが,田毎の月の正体です。

 従って,田毎の月が見られる地形は,次の4つの条件が必要となります。
 1 棚田のように斜面に作られた幅の狭い水田があること。
 2 水がはられた直後か,稲がまだ小さく,水面が十分見える時期であること。(5〜6月)
 3 棚田が見渡せる高台が,その向かい側にあること。
 4 月がのぼってから間もない頃か,もうすぐ沈みそうになっている時間であること。(前者であれば西向きの棚田,後者であれば東向きの棚田である必要があります) 
 新潟県十日町市には, 田毎の月が見られる地
区があり,毎年,5月か6月の満月前後の夜,田毎の月を見る会が開かれています。
 先日(5月10日),十日町星の会の南雲敏夫さんのご案内で,現地へ行ってきました。
 この場所は,十日町市から堀之内町に抜ける252号線の途中にある飛渡地区で,公民館近くの三ツ山集落入口の棚田に,田毎の月がうつしだされるのだそうです。
 向かい側にある高台の登り口には案内図の看板があり,山上には,観月地点として,東屋があります。,さらに登っていった場所には,田毎の月に関する碑もありました。
 中魚沼郡誌によれば,「月の東山に上がるや其の影,各箇の水田に印し,種々変化するといふ。是れ明治20年頃,里人大津文八,日暮れて帰村の途,偶然発見するところにして,爾来観月の為参勝するもの少なからず」と記されています


 当日はあいにくの曇り空で,田毎の月となる時間帯に月は顔を出しませんでした。しかし,その後,顔を出した月に照らしだされた棚田の姿に,どこかしら幽玄な世界を堪能することができました。
 今年度の観月会は5月の11日(予備日12日)に行われる予定でしたがあいにく両日とも天候に恵まれなかったようです。南雲さんの話によると,きれいな田毎の月が見られるのは3年に一度程度ではないかとのことでした。

参考文献 :「コスモくらぶ」第3号  田毎の月を訪ねて 岩見敏明 著
       「飛渡 田毎の月」(パンフレット) 飛渡桜月会
田毎の月を見る会についてのお問い合わせは
         Tel 0257-59-2032 (飛渡地区公民館)まで

トップページへ戻る      これまでのコラムへ