| 華岡青洲の妻(戯曲) |
| 1970年7月中央公論社 |
世界で初めて全身麻酔による手術を行った華岡青洲(はなおかせいしゅう)。
この作品は偉大な医師の陰に隠れた彼の妻と母親の確執を描いた同名の小説を劇化したものである。
| 感想 | ||||||||||||||||||||
| 同名の小説に続いて読んでみたので違いがわかって興味深かった。小説は、加恵が華岡家に嫁ぐ前の話や青洲の父親の話も描かれているが、こちらでは省略されている。代わりに、小陸と米次郎の悲恋が付け加えられている。於継と加恵の確執の深さは、セリフだけのやり取りより、小説の心理描写のほうが伝わってくると思った。しかし杉田玄白から手紙が届くシーンは小説のほうにもあるが、戯曲の方がセリフのなかで説明されており、分り易い。 | ||||||||||||||||||||
| あらすじ | ||||||||||||||||||||
| 華岡家に嫁いできた加恵は、実の娘達より、姑の於継に可愛がられている。加恵は幼い頃から於継に憧れていたのだと言い、於継は是非にと望んだ嫁なのだからと言い、彼女達二人の仲睦まじさは評判であった。そこへ、父の死の知らせにも帰郷せず、一心に勉強に励んでいた青洲が、ようやく京都から帰って来る。喜びに沸き立つ家族のなかで加恵ひとりが浮いてしまう。於継の態度が急に冷たくなってしまったのだ。しかし青洲は賑やかに食事を取りながら、麻酔薬を作る抱負を語るのであった。 そうこうするうち、青洲の妹:於勝の様子がおかしくなる。妹の小陸が心配するが、本人は大丈夫だと言う。一方、加恵は妊娠中。雨が続いて世間は食糧不足であるが、華岡家では、実験用の動物には白米を食べさせて大事にしている。そのついでに加恵にも食べさせろと姑は冷たく言い放つ。やがて於継は勝手に話をつけ、お産のために加恵を里帰りさせることにし、母親が迎えにくる。実の母相手に、加恵は姑の仕打ちを泣いて訴えるが、於継の評判は大層良く、加恵の苦衷は理解してもらえない。加恵が里へ帰った後、於勝は乳癌であることが分るが、手の施しようもなく亡くなってしまう。 動物実験を繰り返した結果、ようやく麻酔薬ができあがる。それを喜び合い、青洲と加恵が睦みあっているところに、突然、於継が来て、麻酔薬の人体実験に自分を使えと言い出す。それを聞いて加恵も名乗りをあげる。言い争う二人に、青洲は仕方なく、二人にやってもらうと言う。口止めしたにもかかわらず、於継が喜びのあまり吹聴したため、人体実験が周囲の知るところとなる。周りは於継と加恵を医家の女の鑑と賞賛する。やがて実験が始まると、於継は、青洲が自分より長く目覚めなかった加恵のほうを心配しているのを見て、口惜しがって泣くが、それさえ、麗しい嫁姑の仲と周囲の目には映り、評判になる。2度目の実験では、目覚めた於継は、長いこと眠っていたと加恵に嘘をつかれ、実はまた短時間で目覚めたことを知り、口惜しがる。 そんな嫁姑の確執をつぶさに見ていた小陸は、夫婦約束をした青洲の弟子の米次郎を避けるようになり、米次郎が問い質すと、嫁に行くのが怖いと言う。 加恵の2度目の実験が行われ、目を覚ますが、眼の痛みを訴え、小陸がそれを最初の実験の副作用だと言う。青洲の説明で、加恵のほうが強い薬を飲んでいたことを於継は知り、ショックを受ける。加恵は失明してしまう。 時が経ち、登城もするようになった青洲の元に、乳癌の老女が来て手術をしてほしいと言う。しかし女の乳を切ることは命を奪うことになると信じられていた為、手術を断ってしまうが、間もなく、牛に乳を衝かれたという女性の急患に呼ばれ、治療に行き、胸を切っても大丈夫なことを知る。青洲に乳癌の手術を受けて老女は元気になり、お礼の品を届けて寄越す。 ところが今度は小陸が血瘤にかかる。嫂として無力な自分を加恵は詫び、米次郎との仲も自分が失明したためにこじれたのだろうと言う。しかし、小陸は嫁に行かなかったことが自分の幸せであったと言う。嫁にも姑にもならずにすんだからと。 妹の病気をまたしても見守ることしかできない青洲は、医術の限界を感じ暗澹たる思いにとらわれる。しかしそんな華岡家に、杉田玄白から教えを乞う手紙が届く。青洲は大いに力づけられ、加恵は家宝ができたと於継と於勝の仏前に手紙を供えるのであった。 |
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| 本文より抜粋 | ||||||||||||||||||||
*杉田玄白からの手紙が届いたシーン*
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| 収録書籍*〜*〜* |
| 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』中央公論社・中公文庫 |
| 参考情報*〜*〜* |
| 曼荼羅華を見る 「華岡青洲の妻」鑑賞の記録 「華岡青洲の妻」観劇の記録 |
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