「華岡青洲の妻」映画鑑賞の感想
スカイパーフェクTV 時代劇専用チャンネルにて1月2日放映 1967年制作
命をかけた女同士の闘いと雷蔵の名演技は必見!
 世界で初めて全身麻酔による手術を成功させた、外科医・華岡青洲。この成功の裏には、完成前の麻酔薬を競って飲む青洲の母と妻、二人の女の壮絶な闘いがあった。有吉佐和子の同名のベストセラー小説を、市川雷蔵主演で映画化した作品。雷蔵は研究者としての非情さと人間としての優しさを見事に演じ、複数の主演賞を手にした。高峰秀子と若尾文子の凄まじい演技も必見。<以上番組ガイドより>


 この映画は戯曲ではなく、小説の方を原作にしていて、ほとんどの部分が原作に忠実であった。先般の舞台に比べ、こちらはかなり満足度の高い作品である。白黒の映像で、画質も良くないのが残念ではあったが。
 観劇の折には、華岡青洲役がまったくイメージにそぐわなかったが、今回の青洲役は市川雷蔵が演じていて、私としてはかなり気に入ってしまった。何と言うか「医術ばか」って感じが良く伝わってきたと思う。青洲は昔の男として女どもにかしずかれるのが当たり前であったとか、母と妻の確執を知っていて利用したとか、彼についての解釈はいろいろあると思うが、私は、彼は単に「医術」のみに熱中し、長けていただけで、それ以外のことは無関心でもあったろうし、器用でもなかったと思っている。そんなイメージが、今回はピタリであったのだ。
 映画では、青洲の活躍と嫁姑の確執が同じくらいに注目を惹く。小説では後者が圧倒的であるが、それは青洲の活躍の裏側なのであるから、表側も描かざるを得ない映画ではそうなるのが自然であろう。治療していたり、手術をしている様子も描かれているが、他人の血を見ると吐き気を催す私には、カラーでないのがありがたかった。かなり、グロテスクだと思う。
 さて、青洲は良かったが、加恵役の若尾文子はちょっと合わないと感じた。演技は良かったと思うのだが、彼女の声はとても低く、物腰も落ち着いているので、新妻らしさが出ていない。姑より貫禄がある感じだ。だから、当初、加恵が於継に憧れて嫁いできて、於継の使い古しのぬか袋さえ貰い受けて、ありがたがって使っていた部分が何だかぱっとしない。ここをきっちり描けないと、青洲が帰って後、姑から急に冷たい仕打ちを受けるようになった加恵の切なさが実感を伴って来ないのだ・・・。
 でもこれはかなり贅沢な要求かもしれない。すべてのキャストが自分のイメージにピッタリ!だなんてことはないものだろうから。これ以外は満足できる、なかなか良い映画であると思った。
「華岡青洲の妻」TVドラマ鑑賞の感想
1992年に製作されたテレビドラマ 2002年8月7日に長野朝日放送で放映
華岡青洲:三浦友和、母親:森光子、妻:小泉今日子、小陸:川越美和
 日頃テレビはあまり観ないので、放映されたあとで「しまった、見逃した!」ということが少なくないのだが、この日は何気なく、朝、新聞のテレビ番組欄を観たのだった。運が良かった〜。

 最初いきなり於勝が乳癌で苦しむシーンから始まる。手の施しようがなく、もし麻酔薬があれば手術ができたのに・・・とこぼす青洲に、母親が「麻酔薬を作って!!」と叫ぶ。この場面が象徴するように、母と妻という女の陰の力があって麻酔薬ができた、というのがこのドラマの描き方であると感じた。
 以前に見た映画や舞台と大きく異なるのが、このドラマでは紀州弁は使われず、親子、夫婦、嫁姑の関係はまるで現代のようだということ。母親は息子に気を遣っておどおどしているし、息子は母親を馬鹿にしているようにさえ見える。嫁も気が強く、夫にも意見するし、姑にもズケズケものを言う。そして息子であり、夫である青洲は、妻と母に言い負かされて動いている感じだ。
 三浦友和は始終ボソボソとしゃべり、やる気があるのかないのか・・・そんな奴を妻と母が発破をかけて、世界初の麻酔薬による手術を成功させるまでの男にした。女の力ってすごいぞ〜という解釈らしい。なんか、どうも違和感を感じてしまう。


 原作通りに、嫁と姑はいがみ合うが、森光子、年のせいか弱弱しい。最初っから、キョンキョンに負けてるゾ!しかもキョンキョンの台詞が下手で下手で・・・。だから彼女らの確執のドロドロ感(?)が出てこない。そして彼女らは姑が亡くなるときには仲良しになってしまうのだ。その前に、妻が子供を亡くしたときに、嫁姑が手を取り合って「これからは実の母娘として生きていこう」と涙ながらに約束するのだ。


 原作と大きく異なるのは、このドラマでは母親は自殺する。二度にわたる麻酔薬の実験で妻は失明する。青洲は大いに心を動かされ、家の女たちを集めて「これからは加恵が女主人だ。何事も加恵の言うことを聞け」と言い渡す。負けたと思った母は、目を夫に差し出した妻に対抗して、自分の命を差し出すのだ。原作にはない3度目の実験を申し出て、青洲が調合した薬以外に曼荼羅華を自分で食べてしまう。実験のせいで死ぬのではないと言い張る青洲に、妻は「いいえ、実験のために死ぬんです!」と断言する。そういう嫁に、臨終の床にある姑は「加恵さん、あなたは私を超えた」と言い、嫁は「あなたが私をお育てになりました」と言う。つまり、二人は憎み合いはしたものの、各々が青洲のために全力を尽くしたと認め合ったわけだ。嫁姑、最後は仲良し、ハッピーエンドでこのドラマは終わる。
 新しい解釈だった〜。もうとにかく現代的で、目が悪くなってきた様子を小陸に気付かれた加恵は「誰かに言ったら、小陸さんを殺す」などと口走る。うわあ〜〜〜。キョンキョンの演技は下手なことは言うまでもないが、たとえば「目が見えない、頭が割れるように痛い」と起き上がって叫ぶ。頭が痛いときに叫んだりしたら、もっと痛いじゃないか!と頭痛持ちの私は演技指導者に抗議したくなった。いろんな解釈があるものだと勉強になったことだ。
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