前編・後編に分かれたこの作品は、また長いものであった。各201分ずつ。ネットで見かけた映画評では、あまり良くは書かれていなかったので---上っ面ばかりで深みがない等---期待しないで見始めたのだが、結構な作品であった。なんたって原作を好んで読んでいると、意味づけは自分で勝手にしちゃうから、深みも出ちゃうってところだろうか(笑)
花柳界を描いた作品はとてもおもしろいのだが、縁のない世界であり、読んでいるだけでは理解しがたいことも多いので、映像はとても役に立つ。稽古のシーン、宴席のシーンなど、とても興味深く見ることができた。ただおしいかな、白黒!カラーだったら、どんなに美しかっただろうと思った。
内容はかなり原作に忠実である。細部が少し異なるが、1度読んだくらいでは気がつかないくらいだろう。
キャストは、ヒロインの朋子役が岡田茉莉子で、母親の郁代役が乙羽信子。朋子役はともかく、郁代役はどうも・・・。演技は良かったと思うが、郁代はその人間性とは裏腹に、たいそうな美人であるはず。親らしいことは何一つしなくても、子供の心に美しい憧れを残すほどの存在であるはずなのに、乙羽信子では容貌が十人並みでありすぎる。それに彼女はとっても庶民的なキャラクターだから、美人の非情さが伝わってこないのだ。もしカラーだったら、この違和感はさらに際立っただろう。
郁代に合わせたのか、朋子の義理の妹:安子も、容貌は十人並み以下である。原作ではこちらも母親によく似て、かなりの美人であるはずである。きれいなだけの女優さんはたくさんいるんじゃないかと思うのだが、なぜ、このキャストなんだろうか。
逆にヒロイン役の岡田茉莉子は美人過ぎるが、母親の身勝手に、ヒステリーを起こす様子など、演技はとても良かったと思う。ただ、顔がとても勝気で『芝桜』の正子を髣髴とさせるものだから、頭の中で『香華』と『芝桜』の話がごっちゃになってしまった(笑)
原作では、朋子は養子を実子と偽っており、宿泊先の岡本楼の女将が、自分が養子に煮え湯を飲まされた話をして、子供は自分の腹を痛めた子でないと駄目だと言って泣く様子を見ている、とても切ないシーンが最後である。しかし映画では、朋子のところも養子だと明かされていて、同じ養子でも違うね、運がいいねという感じになっている。原作のままだと、あまりに寂しいと思ったのだろうか。 |