コラム 第36回 「デジタルカメラで天体写真」

    速い! 安い! きれい!? 月・惑星・太陽の撮影
              2000年9月(最終更新14日)  

 デジタルカメラは,今から5年前に25万画素の安価なものが発売されて以来,急速な進歩と普及を遂げ,今では,300万画素を超す機種が出回っています。
 最初ころは,画質の悪さ,バッテリーがもたない,長時間露出ができないなどの理由から天体写真に使われることはありませんでした。しかし,それらが改善されるにつれて,撮影対象によっては,非常に優れた面が多いことがわかり,天文雑誌等で紹介されることも多くなっています。
 私自身,昨年の夏ごろから太陽,惑星などの撮影に使用していて,今ではなくてはならない機材の一つになっています。

[デジタルカメラの長所]
 デジタルカメラはフィルムに記録するカメラ(以下銀塩カメラ)と比較すると次のような長所をもっています。

1.速い
 撮影したものがすぐ見られます。納得がいくまで何度も撮り直したり,太陽黒点や月食の様子などを短時間でインターネットを通じて配信することが可能です。

2.安い
 フィルム代,現像,プリント代などがかかる銀塩カメラに比べ,デジタルカメラは,フラッシュメモリやフロッピィディスクに画像を記録します。これらは,データを移せば何度でも繰り返し使えるので,費用はほとんどかからないといっていいでしょう。

3.きれい
 デジタルカメラで最初に月の撮影をした時,クレーターなどの写りかたがシャープなのに驚きました。これは,フィルムに比べ,デジタルカメラで使われるCCDの面積が小さく(約1/25),短時間の露出で十分な明るさを得られるためです。この他にもカメラの側で縁(エッジ)を強調する処理を行っている面もあるようです。
 
 これまで,月や惑星の拡大撮影は,大気のゆらぎの影響を受けるため,フィルム1本使って撮影しても,きれいに撮れているものがないということも珍しくない世界でした。デジタルカメラは,それらの問題に対して非常に有効な機材と言えそうです。
 月惑星研究会関西支部のページには,NECのピコナをはじめとするデジタルカメラで撮影された驚くほど解像度の高い 惑星写真が掲載されています。ピコナは,レンズをとりはずす改造ができることや,圧縮されていない画像が記録できる点など惑星撮影に適した点が多いそうです。また,同支部の忍穂井幸夫さんの「惑星観測の広場」や米山誠一さんの「星への誘い」のページには,最新の観測画像が掲載されていて,私も参考にさせてもらっています。  
 私が現在使っているデジタルカメラはSONYのDigitalMavica LCM-FD88Kです。130万画素と,最近の機種に比べ画素数は少ないものの,はがきサイズぐらいの印刷では普通の写真と遜色ありません。Mavicaは,珍しく?フロッピィデスクに記録する機種で,多くの画像は記録できませんが,フラッシュメモリ等に比べ,ほとんどのパソコンですぐに読み込めるため,取り扱いは楽です。この他,光学でズーム比が8倍あるため,構図の選択の幅が広いのも特徴です。

[デジタルカメラによる撮影の手順]
1.接眼レンズのキャップをはずす。
 そのままでは,周辺部が暗く写ってしまいます。
2.支持金具を付けてカメラを取り付ける。
 ミザール製のものを使用していますが,今では,接眼レンズとカメラのレンズを直接接続するアダプターが市販されており,この方が調整は楽でしょう。
3.対象を中央に入れ,ズーム拡大してピントを合わせる。焦点はマニュアルで。露出は中央測光のものを使いますが,実際には+0.5〜1.0の補正を行った方が発色はいいようです。
4.セルフタイマーにセットして撮影。

 以上は,かなり丁寧な撮影の仕方です。科学館にあるK-60mmという大型の接眼レンズを使う場合は,カメラのレンズフードと外径がほぼ同じため,支持金具を使わず,手で押さえつけて撮影することも結構あります。
 さらに,太陽の黒点を撮影する場合は,大型のサンプリズムに,サングラスをはめ込み,K-60mmを当て,さらにデジタルカメラを押しつけて撮影という荒っぽいことをしています。(左欄の上の画像が撮影時の様子)とてもおすすめできる撮影方法ではありませんが,私にとってデジタルカメラの長所の一つに手軽さが加わっていることは言うまでもありません。(上の画像はK-60mmとサングラスをはめ込んだ大型サンプリズム)

 デジタルカメラが月や惑星の撮影に向くことを書いてきましたが,最近では数秒〜数十秒の撮影ができる機種も登場してきました。夜空の星々を撮影するには,まだ荷が重いようですが,少し明るさの残った空に輝く月や明るい星の写真も撮影できる対象となっています。
 近藤全宏さんの「星の風景」はデジタルカメラによる様々な天体画像が撮影方法や画像処理を含めて紹介されています。興味のある方はぜひご覧ください。

 参考文献 :「月刊天文ガイド」 2000年7月号



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