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「来年の今月今夜になったならば,僕の涙で必ず月は曇らしてみせるから・・・。」


 このセリフは,明治時代の作家「尾崎紅葉」による「金色夜叉(こんじきやしゃ)」の一節です。
 富(当時300円のダイヤモンド)のために,いいなずけの宮をうばわれた間(はざま)貫一が,熱海の海岸で宮に向かって別れ話をします。この小説は明治・大正の大ベストセラーで,のちに脚色され,映画や新派の狂言として大ヒットしました。ちょっと年配の方なら,聞き覚えのあるセリフではないかと思います。
 以前,「金色夜叉で貫一が言う,今月今夜の月とは,どんな月なのか?」という質問をいただいたことがありました。当時,原文が見つからなかったために質問に答えることができなかったのですが,広辞苑に一部分が掲載されていることがわかり,私なりに考えてみました。

 「一生を通して僕は今月今夜を忘れん、(省略)。いいか、宮さん、1月の17日だ。来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇ったらば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のように泣いていると思つてくれ」 (*一部抜粋)

 まず,貫一のセリフから,今月今夜が1月17日であることがわかりました。しかし,何年のことかはわかりません。この小説は,1897年(明治30)以降読売新聞に連載されたものであることから,1897年前後の1月17日午後10時の月齢を調べてみると,以下のようになります。
西暦 1895年 1896年 1897年 1898年 1899年
月齢 21.4 2.6 14.3 24.7 5.6
 仮に,貫一が宮に別れの言葉を告げるのが,午後8〜10時と仮定すると,満月前後(12〜16)の月が適当でしょう。そうなると,月齢14の月すなわち,満月である1897年が最も有力と考えられます。満月の光に照らされた熱海の海岸というのは,いかにもという雰囲気になりますよね。
 しかし,来年の月は,上の画像のような月齢24前後の月になります。 ちなみに月の出は午前1時30分前後。結構夜更かししないといけないですね。おまけに,冬の太平洋側の天候になる熱海の晴天率は非常に高く,貫一も相当な気合が必要でしょう。
 このように,月の満ち欠けで日付を決めていた旧暦とことなり,太陽と地球の位置関係によって日付が決まる新暦では,同じ月日であっても月齢が同じになることはなかなかありません。仮に,同じ月齢14になるには19年かかる計算になります。
 今年の1月17日は,晴天率の低い新潟でも薄雲の間からたまに月が見え隠れしていました。みなさんの地域ではいかがでしたか?

 参考文献 : 「理科年表を楽しむ本」 上西一郎 著 丸善株式会社
        :  「広辞苑 第五版」  財団法人新村出記念財団  岩波書店

 写真データ
★月齢 25.7  2000年8月26日 04:07
  10cm屈折+K60mm SONY Digital Mavica LCM-FD88使用
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