1998年7月上旬に鹿児島県徳之島でフィールディングをする機会がありました。
1997年の暮れにMLで知り合ったYくんより「南西諸島のフィールディングに行こう」という話がありました。もちろん了解。その後、同じMLのI氏も参加を表明。
話はトントン拍子に進み、楽しい準備期間を経てその日を迎えました。
私は宮崎から車で鹿児島空港へ向かい、Y、I両氏は羽田から鹿児島空港で合流という手はずです。MLでメールのやりとりしかなかったので緊張しましたが
実際にお会いして時間の制限もなくお互いの興味ある話をできる感動を味わいながら飛行機は一路徳之島へ。飛行機の中では大の大人がトカゲの図鑑を開いて大騒ぎです。
空港に着いてからは荷物待ちももどかしく、外に出ると南西諸島の太陽が照りつけています。本土に照りつける太陽と同じ太陽であることを疑うような日差しは「ここで、見たことがないような生き物にあえるはずだ」という気持ちに確信を持たせました。
ロードマップがない。
地形図は持ってきていたのですが、地形図では車を走らせるのに不十分であることがわかったのです。しかも、古い...道がないはずのところに道があったりします。
暑い...
はじめは河原を探索しましたが何よりもオオジョロウグモの大きさに驚かされました。しかし、爬虫両生類の姿はありません。
夕方になり適当に腹ごしらえをした私たちは完全装備で出発。途中の商店のガラスに多くのヤモリを発見。店の方に許可を得て大騒ぎで捕らえてみるとホオグロヤモリです。しかも妊娠中のようでした。
どうやら、ホオグロヤモリはこちらではかなりの密度で生息しているようなのであせらず採集は明日以降行うことにして昼間の採集地へ。
「あっ!オビ!」
Yくんの声が響きました。まさか、と思って見た彼の網の中には確かに一匹のオビトカゲモドキが。残念ながらあまりの興奮に取り出すときに尾を自切させてしまいましたが、それでも、元気なオビに我々はついに出会えたのです。
あまりにも林の中がイメージと異なり乾燥していたようなので次に水辺を求めて移動をしました。未舗装の細い道に水がちょろちょろと流れている場所がありましたのでそこで探索をすることに決めました。
次の場所へ移動中、道路の真ん中に比較的大きなヘビが動いているのを発見。「すわ!ハブか!」と思う一同の前にヘッドライトで照らされたのはリュウキュウアオヘビでした。
捕まえるときに咬まれもしたのですが頭が小さいため大した傷は負いません。大暴れする中とにかく布袋に入れました。その後、さらに山奥に入るとなんと、特別天然記念物アマミノクロウサギが横切ります。奄美諸島にいることを実感させる出来事でした。
2日目の昼はとにかく昼行性のトカゲを見たいと言うことにつきます。
その日の夕方はヤモリ採集に時間を費やし、その後は昼間に目を付けておいた山際の休耕田に行きました。
最終日は朝から最後のフィールディングに出ました。
このバーバートカゲを最後の収穫として我々の徳之島フィールディングは幕を閉じました。
後ろ髪を引かれつつも徳之島を後にし鹿児島空港ではお互いの健康を祈るとともに再会を誓い合って私は一人宮崎へ戻りました。
こうして、初めての本格的なフィールディングはI氏とYくんの協力により実に有意義で心に深く残る物とすることができました。
そして私はもうもはや戻れないところまでこの身が病に冒されたことをしみじみと感じたのでした。
今回のフィールディングで得た教訓は
最後になりましたが同行して下さったI氏とYくんに心から感謝申し上げます。
おわり
徳之島は奄美大島と沖縄本島にはさまれ、南西諸島ではやや、本土よりに位置します。しかしながらその生物相はほとんど
沖縄本島や奄美大島と同じであるため本土の人間から見ると天国のような島です。特に世界でもここにしか生息していないオビトカゲモドキ
も分布しておりあこがれの島であります。
しかし!!
徳之島にはハブも分布しておりその性質は南西諸島のどの島の個体よりも攻撃性が強い、と言われています。本当に命がけのフィールディングであることを
覚悟しなければいけないかもしれません。
そうこうしているうちに飛行機の窓にはついに徳之島の姿が。
「ああ、あの森にオビトカゲモドキがいるのだな。」と考えると気体に胸騒がずにはいられませんでした。もはや、南西諸島一の攻撃性を誇るハブのことなど頭の片隅にもありませんでした。
レンタカーも想像以上の車種でありいよいよ出発です。途中の小さな店で水分補給のためのペットボトルとYくんの秘密兵器「魚すくい網」を購入。
地形図であらかじめあたりをつけた場所に向かいました。しかし、ここで大きな誤算に気づきました。
これは完全に九州人である私の責任です。つらい。
それでも、山の中に入り適当な場所に車を止めました。
昼間は夜間のフィールディングの下見という目的ではありますがやはり何か姿を見ないと元気が出ません。道にも迷うし不安がよぎります。
それでも奮い立たせて最後の目的地へ。山際の畑にそった林で本土で言うならば絶好のクワガタ採りのポイントです。何気なく落ちていたトタン板をはがすと何か小さな影が動きました。どうやらヘリグロヒメトカゲのようです。
地味ではありますがその容姿には惹かれるものがあり今回の目的の一つでもありましたのでようやく元気が出てきました。一同これでやる気満々です。
ヘリグロは地面のくぼみにたまった落ち葉を踏みしめるとちょろちょろと姿を現し、かろうじて数匹を採集できました。
林の中は昼間だというのに薄暗く足下にはオオゲジ、オオムカデなどあまり歓迎できない生き物も多いのですが目的の生き物はなかなか見つかりません。しかし、それでもYくんはオキナワキノボリトカゲの幼体を採集。そのかわいさに一同の気も和むのでした。
本番は夜、ということで一同は予約していた民宿へ。民宿の近くのバナナの木にもキノボリトカゲや種類不明のヤモリを発見したことでようやく落ち着き夜まで体を休めました。
夜の森も同好の士と森の奥に待つ動物たちを思うと恐怖感もありません。ただし、油断は禁物です。足下にハブがいないか一歩一歩確かめながら進みます。
夜でもヘリグロはおなじみでかなりの密度で生息していることがわかりました。
かなり、奥まで入っていったのですが何の収穫もありません。巨大ナメクジと巨大カマドウマだらけです。あきらめに近い気持ちを持ち始めたその時です。
その後、場所を変え結局は数匹のオビトカゲモドキを我々は目にし、逃がしてしまったものもあれば採集できたものもありました。
車を降りて私がもたもたしている間に早くもI氏が小さなヘビを両手に持ってやってきました。ガラスヒバァです。餌に自信はないのですがとりあえずキープ。
その他ここではオビとリュウキュウカジカガエル、
ヒメアマガエルをキープ。特にヒメアマガエルはあまりにもその奇異な姿の幼生に惹かれてしまいました。
つまり、内臓まで見える透き通った体。上向きの口。大きさに似つかわしくないひげ。さすが、南西諸島の代表のカエルです。リュウキュウカジカは図鑑では見られないような緑色の体色が魅力的でした。
その後、この現場で私が脱輪事故を起こしてしまいもはやこれまでと観念したこともあったのですが、幸い近くの方が通りかかり無事救出。ご迷惑をおかけしました。
オビも採集できたためと初日と言うこともありこの日はこの辺で切り上げました。
民宿に着いたら早く寝ればいいものをいつまでも爬虫類談義に花を咲かせてしまいました。
しかし、どこへ行ってもものすごい暑さで少し歩いたら、すぐに動けなくなります。
「むう、やはり、夕べ頑張りすぎたか...」
と、思っても始まりません。私はとにかくアオカナヘビにターゲットを絞りました。琉球大学のキャンパスで採集したときのことを思い出しながらやぶを歩き回ると...いたっ!
その美しいエメラルドグリーンは紛れもなくアオカナヘビでした。
その後も数匹を採集し私は十分満足できました。
「星野さ?ん!見て見て。」
I氏の言葉に振り返ってみるとそこには大きなサソリモドキがいました。
しかし、この生物は危険を感じると強烈なにおいを発するはず。ところが、この個体は良い子であったらしくそのような無駄な抵抗はしなかったようです。
この後、アフリカマイマイの貝殻にすんでいるオカヤドカリを道路で発見しましたが、それ以上の収穫はありませんでした。
昨夜の休耕地でアオカナヘビを探索し、その他のトカゲも探しましたがもはや心の中もある程度満足していたのとあきらめの気持ちもありそれほど精力的にフィールディングに出ることができませんでした。
しかし、その中でI氏は全身を使って最後の大物を捕まえることができました。そう、青の誘惑、走る宝石バーバートカゲです。
今回何度か見かけることごできたのですが本土のニホントカゲよりもかなり俊敏な動きでなかなか捕らえることができませんでした。うらやまし?。
#また行きましょうね!