宮古島旅行記その1

1998年9月。宮古島へフィールディング旅行へ行く計画が持ち上がりました。

宮古島は沖縄本島と石垣・西表島のある八重山諸島のちょうど中間辺りにある島です。
この島は他の南西諸島の大きな島とは趣を異にしています。
詳しくはわからないのですがサンゴ礁を起源にした島のようで標高が他の島に比べて異常に低いのです。最も高いところでも100mあまりです。そのため、島の中に川らしい川が無く、平地の多くはサトウキビ畑になっています。

さて、今回の話の発端は私の家内が
「9月に東京ディズニーランドへ行って来る。あなたは好きにしなさい。
と、言ったことから始まりました。
そこで、急遽西宮市在住のS氏夫妻に連絡を取り
「かようのような状況なのでどこかにフィールディングに行きませんか?」
と相談。
あっという間に宮古島への旅行が決まりました。

愚かな私はこのとき宮古島がどのような島か全くわからず、S氏に任せていました。
ところがその後、宮古島について勉強してみてびっくり!!
湿地が..無い!
徳之島へのフィールディングで「湿地」が爬虫類や両生類にとって、とても大切な生活の場であることを経験した私は不安に駆られました。
しかし、翻してみると分布している種類が特異であることもまた興味深いところではありました。
このような私の期待と不安をよそに出発の日は来たのでした。

いつものように鹿児島空港まで車で移動。朝一番の那覇行きに搭乗。那覇で宮古行きに乗り換えました。
3ヶ月ぶりの沖縄の海は以前と同じような美しさで私を迎えてくれました。
「う〜ん、やっぱり、来て良かった。
心の底から純粋にそう思いました。
やがて、宮古島が窓から見えました。
ひ、平たい!!
島、というより干潮時に海に現れた「陸(おか)」と言う感じです。まさに、聞きしにまさると言ったところです。
しかし、次第に飛行機が島の上空を旋回し始めると多くのサトウキビ畑の中にまるで「島」のように点在するこぢんまりとした「森」は、これまで「ヤンバル」、「徳之島」と広大なジャングルを対象としたフィールディングとは違ったものが楽しめる予感を、私にさせました。 つまり、あまりに広いフィールドは我々の手に負えないので、小さな森ならば隅々まで探索ができるのではないかと思ったのです。
そして、その森の中に今まで見たことがない生き物たちとの出会いがあることを私は期待し始めました。

空港到着後、S氏夫妻と再会を祝しながらもすぐに車に乗車。早速、ポイント探しに出発です。
初めての宮古島の印象は

の三点です。とにかくコンビニもあるし、大きな店もあるし便利そうでした。その分、環境の破壊に不安がありますが...

はじめはどこかポイントを探すことだけを考えていたのですがやはり良さそうなポイントを見つけてしまうとフィールディングを開始してしまいます。
道路横に車を止めるスペースを発見。その奥にちょっとした森へ入る道があったので進んでいくと小さな草むらがありました。草と草の間に何か動くものを見逃しませんでした。初めての宮古島で私たちを最初に歓迎してくれたのは
ミヤコカナヘビです。宮古諸島にしか生息していない生き物にはじめから出会える幸運を神に感謝しながら手を伸ばすと...逃げられました。
何、はじめはこんなもんだろう。まだたくさんいるさ。」とうそぶきながら、2匹目を発見。...失敗。3匹目も失敗。体全体で捕らえに行っても失敗。しかも、気づくと蚊の大群に襲われ全身がかゆかゆ状態。あえなく敗走。
車に戻り虫よけを塗り、完全装備になるも突然のスコール。結局、ミヤコカナヘビはこの日、この手に取ることはかないませんでした。
と、そのときS氏の叫び声が。どうやら何か見つけたようです。岩場の小さな穴の中にサキシマキノボリトカゲがいるとのこと。しかし、岩穴の中ではどうにもなりません。
この後、文字通り木の幹につかまって我々をやり過ごそうとするキノボリを発見。悪戦苦闘の末ついにゲット!記念すべき宮古初の採集個体は小さなサキシマキノボリトカゲでした。
これに元気づけられて道路を挟んだ林に行くと、雨上がりで濡れた路面を走る小さな影が...これを確実に捕らえてみると..サキシマスベトカゲでした。名前の通りすべすべしていて軍手からは容易に逃げられそうでした。
さらに日当たりの良い路面をのそのそと動く物体を発見。ミヤコヒキガエルです。確かに本土で見慣れたニホンヒキガエルとはどことなく違っています。
近くに放置された木の板がありそれをめくっていくとヤモリの姿がありました。そのヤモリをゲットしようと躍起になっているとS氏が
サソリッ!!
まさかと思いながらそっと木の板をどかしてみると小さいながらもしっかりとサソリの姿をしているヤエヤマサソリでした。
サソリ初体験の私はびびりながらもゲット。後から調べると無毒種だとか...
いつまでも、同じところで時間を過ごすのはもったいないと考え、次のフィールドを探しに出発しました。
途中、旅の疲れからかS夫人が体の不具合を訴えられたので道路に車を止め休憩。
こんな時にも、フィールディングを初めてしまうところが私の悪いところ。街路樹の皮のところに謎のヤモリ卵を発見、転卵(卵の上下を変えてしまうこと)に注意し、慎重に持ち帰りました。後からわかったのですがこの卵はホオグロヤモリのものであることがわかりました。
その後、一度宿に戻り夕方からフィールディングをすることにしました。この間、一人で沖縄名物「サーターアンダーギー」と「ゴーヤチャンプルー」をつまみに飲む「オリオンビール」のうまいこと。しかも、まだお天道様が高く上がっていましたので...
さて、夜になりフィールディング開始。
昼のポイントへ行きヘビの探索を始めます。宮古島にはハブはいないので安心して森の中に入れます。木や壁には多くのヤモリが見られます。ホオグロヤモリとミナミヤモリのようです。適当にゲットした後、突然S夫人の悲鳴が!
ヘビッ!!
その声のもとに走っていくとそこにはサキシマスジオの姿が。興奮を抑えつつも確実にかつ、限りなく優しくゲット。日本最大級のヘビとは思えないかわいらしさ。
サキシマスジオの発見に気を良くし、二匹目のドジョウならぬヘビを求めてさらに探索を続けます。
何か予感がしてふと近くのやぶに目を向けるとそこになにやら横帯の細長いものが。やぶなので失敗はそのまま逃げられることにつながりますので頭の中でシュミレーションをして素早く手を伸ばしました。ところが意外にもつかまれてもおとなしく難なく捕獲。すぐにS氏に見せに行くと
サキシママダラですね。」
初めて見るマダラヘビに感動しそのポイントを後にしました。
次に我々が向かったのは海岸近くにある小さな社です。ここは、暗くてじめじめしているのでヘビを期待しました。雨も降り始めて不安はよぎったのですが見事に予想は的中。社の前にサキシママダラが横たわっていました。また、ここでは木の枝に垂れ下がっているツタのようなものにつかまって熟睡するサキシマキノボリトカゲの姿も見ることができ実際にフィールドに出て野生の彼らの姿を見ることに感動を覚えました。
この夜は初日の夜ということもあって一同ぐったりしていましたのでまあまあの収穫に満足しながら宿へ戻りました。その帰り道には巨大なカニ「オカガニ」、ブルーがきれいな「ヤシガニ」を観察することもできました。

その1・・・おしまい。

宮古島旅行記その2へ

おわり

トップにもどる
旅行記のページにもどる
INDEXページにもどる