** 『非色』参考書籍の紹介 **

 戦争花嫁であるヒロインがアメリカに渡り、夫が黒人であることから人種差別の渦に巻き込まれるが、苦難に負けず生き抜く姿を描いた『非色』。話の展開のおもしろさゆえに、テーマの重さにも関わらず、あっと言う間に読み終わると、すでに死語となっている「戦争花嫁」や人種差別の実態に興味をそそられる人が少なくないようだ。
 私も以前、「戦争花嫁」に興味を持ち調べたが、参考になる文献を見つけることができなかった。ところが今度「有吉文学談話室」への書き込みをきっかけに再度調べてみると、けっこう見つかるではないか!それだけネットの世界も充実してきているということだろう。ありがたいことである。
 そこで入手し読んでみた本を、以下に紹介する。古い本が多く、図書館から借りたものがほとんどであった。

■ 『花嫁のアメリカ』 講談社 江成常夫著 1981年発行

 フリーの写真家である著者が、縁故を辿って在米の「戦争花嫁」100名弱にインタビューをしたもの。当時の家族写真や、結婚した頃の写真も豊富である。米兵と交際する女性たちに家族は寄りかかって生活していたのに、彼女たちを売春婦のように扱い、結婚や渡米に当たっては勘当同然・・・という、『非色』の描写と良く似た様子が多く見受けられた。しかしインタビューに応じた女性たちは、まずまず幸せに生活している人たちで、白人と結婚した人が多いようだ。『非色』のヒロインのように黒人と結婚した女性はそう多く登場していないので、人種差別の中でどんな風に生きてきたのかを知るには、少々、物足りない。しかし、これだけ多くの「戦争花嫁」の話を読めたのは、たいへん興味深いことだった。
本文より抜粋


 なお、これには続編が出版されていて、購入可能である。
 『花嫁のアメリカ 歳月の風景 1978-1998』集英社 \3800

■ 『戦後体験の発掘 15人が語る占領下の青春』 三省堂 1991年発行

米軍による占領期を「日本の青春期」ととらえ、その時期に人生の青春期を過ごした15人に、戦中・戦後・占領期を語ってもらった対談集。米軍の占領は、戦争に負け、政治を牛耳られる屈辱感などというより、自由や開放感のほうが濃厚だったようだ。しかし興味を持つにはすでに戦後も遠くなりすぎてしまった。
この中に上述の『花嫁のアメリカ』の著者も登場していて、著作のきっかけやインタビュー後の感想が述べられていて興味深い。

 戦争花嫁の定義はいろいろとあるんだけど、アメリカの将兵と結婚して渡米した日本女性、というおおざっぱなとらえ方をすれば、日本の敗戦からヴェトナム戦争終結までのちょうど30年間、その数はざっと10万人ぐらいだろう、といわれてます。その花嫁たちがどんな状況のなかで米兵たちと出会い、どんな心境で母国の日本を離れたのか、それを聞き、記録することは結局、当時の日本と送り出したわれわれ日本人を検証することにもなる、そう思ったわけなんです。

本文より抜粋

■ 『ワシントンハイツ横丁物語』 日本放送出版協会 大泉博子著 1993年発行

戦後、代々木にあったアメリカ駐留軍の住宅地域ワシントンハイツ。その近くで育った著者が、思い出を元に描いた物語である。中の1篇「戦争花嫁の家族」が興味深かった。
本文より抜粋

■ 『遥かな理想郷[在米四十七年]』 おうふう かとむゆりこ著 \1500

戦争花嫁である著者によるエッセイ集のような本。彼女は白人男性と結婚した。戦争花嫁であることばかりでなく、現在アメリカに暮らす日系人の一人としての内容が多いが、中に「『非色』をめぐって---座談会」という一章があり、これはめっけものと喜んだ(笑)。著者は「如月会」という戦争花嫁未亡人会を主催しているらしいが、彼女たちの読書会としてこの本に紹介されていたものは他に『置き去りにされたマリア』という本があり、かなり興味を抱かされた。
本文より抜粋

■ 『ベティさんの庭』 新潮社 山本道子 昭和47年

「談話室」へ書き込まれたMargaretさんのメッセージで知ることとなった作品。短編集である。

ベティさんは四国生まれの日本女性で、もとは柚子(ユウコ)と言った。戦後、立川基地界隈で働いているときに知り合った豪州兵のマイクと結婚するために洗礼を受け、クリスチャンネームのエリザベスから「ベティさん」と呼ばれるようになったのだった。
 オーストラリアに移り住み、息子も3人いるが、ベティさんは幸せではない。夫は白人だし、きちんと仕事をして家族を養ってくれている。彼女自身も自分の望みが何なのか途方にくれている。英会話はこなせるが、運転免許の取得は夫に反対され、家事以外にはやることもない。広大なオーストラリアの中で、ベティさんは孤独をかみ締めて生きている。そんな彼女にとって、月に一度、日本の漁船の乗組員を自宅の庭で接待することが、ここ数年の楽しみとなっていた。
 夫の国に馴染むことができず、かと言って日本に帰ることもままならない、鬱々とした戦争花嫁の心情が綴られた70ページほどの作品である。こういう哀しみを抱きながら生涯を過ごした戦争花嫁が、実際には大半だったのだろうと思った。

■ 『戦争花嫁』 芙蓉書房出版 \2000 林かおり・田村恵子・高津文美子 平成14年

2002年5月に出版された本である。まったく偶然に見つけたものだ。出すなら、教えてよ〜って感じだ(笑)
アメリカやオーストラリアに住む三人の著者たちは、「戦争花嫁=元・売春婦」というような偏見に疑問を持ち、それを払拭できるようなレポートを出そうと取材を続ける。彼女たちが会えた「戦争花嫁」たちは、幸せに生活してきた人々がほとんどである。もちろん元・売春婦などいない。戦後、「戦争花嫁」が続出したのはやむをえない事情によってであり、アメリカやオーストラリアへ渡って後は、様々な困難を明るく前向きに乗り越えた、立派な生き様を示している、と著者たちは主張している。
たくさんの「戦争花嫁」に取材を行ったようだが、彼女らのエピソードはあまり多くはない。しかし、出版物などの参考資料はたくさん紹介されているので、「戦争花嫁」に関心のある向きには便利な本だと思う。『非色』も参考資料に挙げられており、本文中にも幾度か言及されていた。
最後に「ある戦争花嫁の半生」と題して、スナイダー道子さんという女性が紹介されている。この方というか、旦那様ができた人で、すっかり感心して読み耽った。たいへんに幸せな人生が描出されていて、気持ちの良い読後感を持った。















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