県境の奇跡・オビトカゲモドキ

幼体はこちら(撮影:有田)

和名:オビトカゲモドキ


学名:Goniurosaurus kuroiwae splendens

分布
徳之島
生態
クロイワトカゲモドキと同様です。徳之島では水気のあるところに多かった印象がありますが道路などにも出ていました。
全長
クロイワトカゲモドキと同様140〜190mmです。
参考文献
日本動物大百科5両生類・爬虫類・硬骨魚類:平凡社
爬虫類・両生類800種図鑑:ピーシーズ

解説
日本に分布するキョクトウトカゲモドキ属Goniurosaurusクロイワトカゲモドキの5つの亜種のうちの一つです。他の4つの亜種(クロイワ、マダラ、イヘヤ、クメ)が沖縄本島付近に分布しているのに対し本種のみ鹿児島県の奄美諸島の徳之島に分布しています。 他の4亜種が沖縄県指定の天然記念物に指定されているのに対して本種は鹿児島県に分布しているため採集、飼育が可能です。ただし、確実に減少しているはずですので無計画な採集や飼育は慎みたいところです。
他の亜種は比較的斑紋に変異がありますが本亜種の体色はほとんど個体による変異が少なく胴体に3本、頸部に1本の淡紅色または朱色の横帯があります。他の亜種に見られるような縦条はありません。
2003年4月1日付けで、鹿児島県指定の天然記念物に指定されました。
飼育
2003年4月以降、天然記念物に指定されましたので、飼育や採集は禁止されました。
以下の記述は、2003年以前の飼育記録であり、天然記念物指定前に入手し、飼育をされている方々へ参考にしてもらいたいと考え、掲載しておきます。
くれぐれも、違法採集や違法飼育を推奨するものでもありませんし、このページを違法飼育の参考にされないで下さい。

現在私は3匹の個体を飼育しています。他に多くの方がきわめて真剣に、繁殖法の確立を目指して飼育をされています。その中でも少なくとも飼育下で交尾、産卵、孵化、幼体飼育まで成功されている方もいらっしゃいます。しかし、それらの方々はそれぞれ個性的な飼育法で飼育されていますので、これと言った飼育法は未だ確立には至っていません。 ここでは、あくまで、一年間は無事に飼育を続けてこれたが繁殖には至っていない私の飼育法だけを紹介します。

①30cmのガラス水槽に雌雄の1ペアを飼育しました。床材はピートモス、シェルターとして植木鉢を半分に切ったものと流木、水入れと餌入れを常設しています。温度は冬の最低で20℃くらい。なお、繁殖させるためにはもう少し下げた法がよいかもしれませんが私は試していないので責任は持てません。あしからず。保温は温室を利用し熱帯魚用ヒーターでガラスの瓶に入れた水を加熱して間接暖房しています。冬の保温よりも夏の高温で状態を落とす個体が多いようです。湿度も得られるので気に入っています。

②今年(1999年)から60cm水槽で雄1雌2のトリオで飼育を始めました。床材はピートモスとヤシガラ土を混ぜたものを使用し、植木鉢を半分に切ったものを個体数+1個を埋め込みました。床材は起伏で変化をつけました。シダなどの観葉植物をたくさん植え込んでいます。植木鉢の中にいるよりも植物の影にいる方が多いようです。現在は照明を利用していませんが植物のためには必要と考えています。保温はケージの下に遠赤外線ヒーターを敷いています。

餌はコオロギ、ミールワーム、ブドウムシ、ミミズなどがよいようです。この中ではミミズとブドウムシが良かったです。ただし、ミミズはシマミミズではなくフツウミミズです。また、ワラジムシは結構良い餌のようで今まで見られなっかたほどアクティブな動きで補食します。カルシウムの供給源としては良いかもしれません。

冬は一定の休眠期間が必要であると考えられます。これも多くの方がいろいろ試していますが、参考までに私は、冬の室温(最低10℃くらい)で一ヶ月間ほど無加温、無給餌で過ごさせてみました。

③繁殖について・・・1999年6月に産卵を確認しました。②の環境で全部で4卵を確認しましたが、同じ雌からなのか、異なる雌によるものかは確認できませんでした。深さ2〜3cmに埋めてありました。取り出して大きめのタッパーに移し替え、湿らせたピートモスの上に置いて通気のために上からは乾いたヤシガラ土をかけてみました。無加温で孵化を試みましたが20日ほどでしぼんでしまいました。

何度も言いますが飼育法が確立されているわけではないので、これで良いという責任は持てません。もう少しで多くの方の経験の積み重ねの成果が出るやもしれませんのでそれまで待つのが得策かも。無責任ですみません。
コメント
現在外国産のトカゲモドキや地上性ヤモリの飼育が密かに広まっているように感じます。国産のトカゲモドキである本種もそういう意味ではとても魅力的な種であります。また、若干他亜種と分布域が異なっていたために保護の対象からはずれ飼育の対象となっていますので注目を浴びないわけがありません。
これが我々愛好家にとっては幸運であり、逆に本種にとっては不幸だったのかもしれません。そのためにも飼育を行う方々は、もちろん私も含めて一生懸命に飼育をしていくべきでしょう。そして何としてでも繁殖を成功させ、飼育繁殖個体のみを流通させるようにして野生個体群の維持をしていきたいものです。たくさんの個体を飼育していくにはあまりにも分布域が狭すぎます。
そこまでして始めて「ああ、オビトカゲモドキが沖縄県に分布していなくて良かった」と我々は言えるのではないでしょうか。

と、上のようなコメントを2003年以前に書いておいたのですが、残念ながら、そして彼らにとっては幸いなことに、2003年についに鹿児島県指定の天然記念物に指定されました。これでいいのだと思います。
ただ、それ以前から飼育されている個体の扱い、繁殖した個体の扱いはどうなるのか?そして、果たして飼育用の採集を規制するだけで彼らの安住が守られるのか?開発の問題は?問題は山積みだと思います。

写真を提供してくださった有田さんに心から感謝しお礼申し上げます。有田さんにメールを送りたい方は私、星野まで。 ※スパム対策のためメールアドレスの「@」の部分を「☆」に変えています。恐れ入りますが、メール作成画面起動後「宛先」欄の「ihoshi☆mb.infoweb.ne.jp」の中の「☆」を「@」に書き換えて下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

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