コラム 第42回  「2000〜2001年の木星」
    
〜展開図で見る木星面の変化〜
        2001年4月     トップページへ戻る  




 新しい世紀を迎えて早4カ月。木星は夕方に西の空に回り,昨年7月から続けてきた今シーズンの木星撮影も終わりに近づいています。そこで,撮影された画像から作成した展開図をもとに,今シーズンの木星面の様子を簡単にふり返ってみることにしました。なお,木星の体系や模様の名称については下の欄の「木星観測ガイド」を参照下さい。
参考資料:「天文ガイド2000年10月〜2001年5月 惑星の近況(伊賀祐一氏)」
       「月刊天文 2000年10月 2001年2,5月号 OBSERVER'S GUIDE 惑星 (堀川邦昭氏)」
 2000年7月
 7月は,高度の低さやフェーン現象による気流の悪さに悩まされ,展開図に耐えうる画像を撮影することができませんでした。(後にビデオカメラのシリンダーヘッドに不具合があったことも判明) 観測日数7 画像数18
 昨シーズンとの大きな違いは,木星の目立つ縞模様の一つである大赤斑の北(下)の南赤道縞(以下SEB)の中央部が淡化し,二本の縞のようになっていたことです。このまま,淡化傾向が続くのではないかと期待されましたが・・・。
 赤道帯南組織(以下EZsには巨大な白斑(GWS)があり,7月23日(UT)ごろ大赤斑の北側を通過していきました。
 2000年3月に2つの白斑が合体してできた永続白斑「BA」は7月21日(UT=世界標準時20日)に2系327度に確認できました。 (画像は7月21日のもの)
 2000年8月
 8月に入り,明け方の高度が上がってくるにつれ,次第に模様の詳細が撮影できるようになりました。観測日数8 画像数16
 大赤斑から前方に向かって streak(ストリーク「細長い縞」)が永続白斑BAの下(北)まで伸びています。南温帯縞(STB)の「BA」が8月21日(UT)に2系310度付近に,EZsのGWSは8月17日(UT)には1系240度付近に確認できます。北熱帯縞(以下NEB)は2系40〜260度に渡って複雑に入り組んでいて,昨年と同様に北赤道帯北組織(以下EZn)にフェストーンが伸びています。
 2000年9月
 中旬以降ビデオカメラを変えたり月関西支部の伊賀氏から画像復元のアドバイスをいただいたりして観測に使える画像が比較的コンスタントに撮影できるようになりました。観測日数8 画像数27
 9月6〜9日にかけて,EZsのGWSが活動的になり,SEBnから白雲が流れ込んでいる様子が観察されました。上の展開図はGRSの北側を通過している(1系270度付近)頃ですが,この頃にはすでに活動が収まっています。STBの永続白斑「BA」が9月18日(UT)に2系300度付近に確認でき,周囲を暗物質で取り囲まれているため,輪郭がわかりやすくなっています。北熱帯縞(以下NEB)は2系40〜160度に渡って複雑に入り組んでいるものの,他の経度では全体的に幅が広がっています。北熱帯縞北組織(以下NEBn)にはBargeが2系150度,205度,330度付近に,Notchが2系220度,320度 付近に確認できます。
 2000年10月
 撮影可能時間が長くなり,1日あたりの観測数が増えました。また,NASAの探査機「カッシーニ」からの画像が公開され,比較しながら観測できるようになりました。観測日数7 画像数25
 10月21〜27日にかけて,EZsのGWS(1系310度付近)が活動的になり,前後のEZsが濃化している様子が観察されました。GRSは今シーズン2系75度付近に位置していており,大気の状態の良い時には中心のコアの様子もわかりました。STBの永続白斑「BA」は10月21日(UT)に2系285度の位置で,見やすい状況が続いています。NEBの幅の広がりの変化はあまり変化は見られませんでした。
 2000年11月
 11月28日に衝を迎え,前後で良気流に恵まれるとかなり細部まで観測できました。観測日数5 画像数30
 GRS前方のstreakの一部が濃化し,南熱帯(STrZ)に暗斑(dark spot以下DS)が形成されました。11月22日UTには2系40度付近に位置しており大赤斑に近づいています。EZsのGWSは22日UTには1系340度付近にありますが目立った活動は見られませんでした。STBの永続白斑「BA」は11月3日(UT)に2系280度,22日(UT)に2系270度付近に確認できました。NEBは中旬以降ほぼ全周に渡って幅が広がり,NEBnにはBargeが2系40度,145度,195度,210度,265度,300度,320度付近に,Notchが2系200度,310度 付近に確認できます。
 2001年12月
 冬型の気圧配置になると寒気が抜けるまで数日間気流の悪い状態が続くようになりました。観測日数7 画像数20
 今シーズン淡化が期待されたSEBですが,はっきりと2本に分かれて見える経度が少なく(2系60度〜260度)なりました。GRS前方のDSは2系42度付近で停滞しています。EZsのGWSは9日には1系0度付近にありますが依然目立った活動は見られません。STBの永続白斑「BA」は9日に2系265度付近に確認できました。NEBnにはBargeが2系35度,145度,195度,210度,265度,300度付近に,Notchが2系200度付近に確認できます。
 2001年1月
 晴れる日が少ない新潟の冬ですが,寒気が抜けると意外に安定した気流に恵まれることがありました。観測日数6 画像数20
 今シーズン,南南温帯縞(以下SSTB)に3つの白斑が等間隔に並んでいる様子が観察されていました(6日(UT) 2系100〜140度付近)。その間隔が徐々に縮まってきています。GRS前方のDSは2系47度付近にあり,ゆっくりとGRSに近づいています。EZsのGWSは6日には1系50度付近に,STBの永続白斑「BA」は17日に2系250度付近に確認できますが,両方とも次第にわかりづらくなっています。NEBnにはBargeが2系30度,145度,185度,265度,310度付近に,Notchが2系195度付近に確認できます。
 2001年2月
 気流が安定する日は少ないものの高度はまだあり,細部が確認できる日もありました。観測日数8 画像数22
 GRSの南側を通過中のSSTBの3つの白斑のうち,後方の2つが10度以下に接近し,合体するのではないかと期待されました。GRS前方のDSは9日に2系52度,26日に58度とGRSへの接近が急になりました。STBの永続白斑「BA」は17日に2系240度付近に位置しており,EZsのGWSは8日に1系100度あたりにあるのではないかと思われます。NEBnにはBargeが2系30度,175度付近に,Notchが2系185度付近に確認できます。
 2001年3月
 上旬〜中旬にかけて天候,気流に恵まれず,日没時の高度が下がりはじめたこともあって,細部が確認できる日がほとんどありませんでした。観測日数9 画像数17
 GRS前方のDSも10日前後に大赤斑の前端に到達して大赤斑に飲み込まれてしまったようです。SSTBの3つの白斑についても条件に恵まれず,詳細をとらえることはできませんでした。24日の画像ではGRSの周囲にDSとの会合によると思われる暗物質が取り囲んでいる姿を観察できました。STBの永続白斑「BA」は11日に2系230度付近に位置しており,EZsのGWSは8日に1系140〜150度あたりにあるのではないかと思われます。

 2001年4月
 おだやかな晴天が続くことが多くなりましたが,日没時の高度が低くなり良像が得られなくなりました。観測日数12 画像数21(4月21日現在)
 DSを取り込んだGRSの前方にstreakが形成されている様子が5日の画像で確認できます。STBの永続白斑「BA」は4日に2系220度付近に位置しており,EZsのGWSは7日に1系170〜180度あたりにあるのではないかと思われます。NEBは全周に渡って太くなっており,NEBnにはBargeが2系20度,170度付近に,Notchが2系180度付近に確認できます。
最新木星画像

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木星観測ガイド

 太陽系最大の惑星である木星は,表面の模様に変化があり,観測しがいのある天体です。
 最近の機器の進歩にともないアマチュアの方でもすばらしい画像を撮られる方が多くなりました。撮影用の特別な機材がなくても,口径15cm程度の望遠鏡を使って,その数倍の口径の望遠鏡で撮影した画像と同等以上の情報量をもつスケッチをとられる方もいます。
 このページでは,木星の観測をしていく上で必要になる基礎的な事柄をまとめていこうと思います。

[中央経度と体系]
 木星の模様は,自転により刻々とその位置が変わります。木星の中央経度(木星の中央子午線を通過している経度)がわかると,その時刻に見える木星の模様を予想したり,複数の観測データを比較したりすることができます。
 木星の表面近くは水素の液体に近いガスでできているため,自転周期が緯度によって異なります。表面的には赤道付近の体系1(Ⅰ)の地域と赤道付近より緯度の高い体系2(Ⅱ)の地域に分けられます。 
 体系1(Ⅰ)・・・木星の緯度で南北約9°の赤道部
          (自転周期9時間50分30.0秒)
 体系2(Ⅱ)・・・体系Ⅰ以外の地域
          (自転周期9時間55分40.6秒)  
 この他にも木星の電波源に基づく内部の自転周期を表す体系Ⅲ(自転周期9時間55分29.7秒)があります。 
 体系Ⅰ,Ⅱの数値は,ステラナビゲータなどのシミュレーションソフトで求めることができます。また,月惑星研究会関西支部のページにある木星の中央経度を計算するJAVAアプレットなどを使うと小数点以下の詳しい数字も求めることができます。 以下に木星の主な帯と縞の名前,表面に見える特別な模様についてまとめました。

参考文献
 「天文アマチュアのための天文スケッチ入門」
    安達 誠著 誠文堂新光社
 「惑星ガイドブック2」
    月惑星研究会編 誠文堂新光社
                *いずれも絶版



                木星の主な帯(ZONE)と縞(BELT)の名前
 木星を望遠鏡で見ると,赤道にほぼ平行な縞模様が見られます。明るい模様は帯(Zone),暗い模様は縞(Belt)と呼ばれていて,北半球にあるものは頭にNを,南半球にあるものはSをつけ,緯度によって赤道域,熱帯域,温帯域と区別しています。なお,画像は,望遠鏡で見たように上下逆さま(南が上)になっています。
名前(南から) 特徴
1997年9月8日20:35
Ⅰ=30° Ⅱ=334°






*左端中央の白い円は衛星イオ,
中央やや左側にその影が見られます
SSTB(南南温帯縞) 白斑が見られることがある(今は3つ並んだものが目立つ)
STZ(南温帯) 部分的に薄暗くなったり白斑,暗斑が見られたりする
STB(南温帯縞)
south temperate belt
永続白斑が見られる
STrZ(南熱帯)
south tropical zone
大赤斑(GRSまたはRS)を含む明るい
SEB(南赤道縞)
south equatorial belt
南組織(SEBs)と北組織(SEBn)その間のSEBzに分けられる。現在,SEBzの大部分が淡化している
EZs(赤道帯南組織) 隣接の縞や帯とともに明るさが変わることがある
EB(赤道紐)
equatorial band
年によっては,見えにくくなることがある
EZn(赤道帯北組織) フェストーン(ヒゲ状の模様)が見られる
NEB(北赤道縞)
noth equatorial belt
濃く目立つ縞模様で太さの変化が激しい。南組織 (NEBs)と北組織(NEBn)その間の NEBzにより構成される
NTrZ(北熱帯) 明るく見えることが多い。暗斑がでることがある
NTB(北温帯縞) 赤道縞の次によく見えることが多い
NTZ(北温帯) 明るさが変わることがある
NNTB(北北温帯縞) 淡く見えることが多い
NNTZ(北北温帯) いつも暗く見える



 木星には,下記のような特徴のある模様が見られます。これらは,いつも同じ経度にあるわけではなく,少しずつ移動しながら変化しています。
模様の名前 特徴
白斑
(Bright Spot)
 略してBS
*永続白斑(LEBS)
 円形または楕円形状の周囲より明るい部分。木星面上どの場所でも発生する可能性がある。STB(南温帯縞)には,40年以上続けて観測された3つの白斑(永続白斑)があったが,現在は1つに合体している。
大赤斑
(The Great Red Spot)
略してGRSまたはRS
 STrZ (南熱帯南部)に位置する17世紀ごろから観察されている楕円形をした渦巻き状の模様。最近は全体的に薄く,南側だけがうっすらと色づいているように見える。周囲の雲の高低によって,見え方が変化する。
フェストーン
(Festoon)
 EZ(赤道帯)の中によく見られるヒゲ状の模様。その他の帯にもまれに出現することがある。
リフト
(Lift)
 縞が切れて細長い明部を作っているもの。その周辺の縞が,これにともなって大きく変化することが多い。
バージ
(Barge)
 横に長い暗斑。バージは「はしけ」のこと。NEB(北赤道縞)の北組織に多く見られる。
ノッチ
(Notch)
 半円形の明部。ノッチは「湾」のこと。バージとノッチは同時期に複数出現することが多い。
スポット
(Spot)
 小さな点状の暗い模様。長さによってバー(Bar)「棒状暗斑」やストリーク(Streak)「細長い縞」と呼ばれる。
 その他にも以下のような模様が見られることがあります。
 「アーチ」(Arch)・・・白斑や明部を取り囲むように見られる橋のような縁。
 「ダークセクション」(DS)・・・縞の一部なとに見られる模様の暗くなった部分。
 「プロジエクション」(projection)・・・突起物(?) 「オーバルl」(Oval)・・・楕円形の模様